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鹿児島県~本場本物の“くろず”に発酵食品の奥深さを知る

佐川 弘二

2012年10月15日

鹿児島県霧島市

9月に鹿児島県加工推進懇話会さんから依頼を受けて講演をしてきた。 懇話会は県内食品加工企業や団体約100社が集まって、鹿児島の農産品加工を盛り上げていこうという団体で、昭和62年から活動している。近年は国でも農業の6次化が推し進められているが、はるか25年前から農産加工の重要性を掲げてきたフロンティアである。 その講演会にも参加されていた「くろず」の坂元醸造株式会社さんに伺った。 ここ霧島市福山の壺畑の風景は、以前から写真をみて知っていたけれど、実際に目にすることができるということで楽しみにしていた。それは期待以上の素晴らしい環境だった。

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鹿児島市内から車で約1時間、桜島を中心に錦江湾をぐるっと半周するように移動。坂元醸造さんでは見学者のために開かれたスペースを提供している。目の前に広がる壺畑、くろず造りの情報展示、そしてレストランがある。左奥には噴火している桜島と壺畑・・・この絶景はぜひ見てほしい。鹿児島を訪れる方は足を運んで損はない。 研究開発部の橋口さんからくろずの製法をレクチャーいただく。200年以上も昔から受け継がれた製法はいまでも変わらないそうだ。実は、伺う前は勝手な想像で黒い壷以外にもステンレスタンクとか使って大量に作っているのかな、などと思っていたが、すみません、私が浅はかでした。 たった一滴の例外もなく、5万2千本の黒い壷で伝統的なくろず造りをしている。ここに、坂元醸造さんの製法に対する気合を見た。おそらく今後どんなに技術が発展してもこの製法を変えることはないだろう。 くろずの原料はいたってシンプル。米、米麹と地下水、以上。この原料を下の写真の図のように、壺の中で層を作る。あとは自然に、蒸し米の糖化→アルコール発酵→酢酸発酵させていくのである。 しかし坂元醸造さんの凄いところは、このローテクな製法の一方で、研究開発、技術開発にも注力しハイテクを駆使しているのだ。写真はNGだったが、先端の装置を導入し、発酵技術、熟成の研究は様々な大学とも共同研究しているほどだ。

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今回は特別に研究室前の壺畑を見せていただいた。

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下の写真は壺の一番上部層の米麹(振麹)。グレー色の麹菌が発生しているのが見える。この段階で壺に片方の耳を入れて、じーっと聞く。時折「プツッ、プツッ」と音がする。アルコール発酵で炭酸ガスが出ている証拠だ。

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下の写真の段階は、アルコール発酵が進んで役目を終えた上層の米麹が液体の下に自然と落ちていく様子。

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すると、徐々に液面に白っぽいものが出てくる。これが酢酸菌だ。

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そして、こちらが完全に米麹が落ちて液面を酢酸菌が覆ってきた。この段階から酢酸発酵が進んで、いよいよ“くろず”となる。

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ちなみに、上記の発酵段階の写真は同じ環境下に並んでいる、同じ日に撮影した別々の壺だ。つまり、一つ一つの壺によって、発酵の進み具合は全く違っている。完全に自然に委ねて発酵させているのでこのような差異が出るのは当然だ。そこで、専門の職人さんが毎日すべての壺を覗いて発酵具合を確認している。文章にすると簡単だが、これは本当に大変なこと。なにせ壺は5万2千本あるのだ。しかも、職人さんの熟練の技は目で見て、音を聞いて、と複合的な職人技だ。こうした職人さんの技術と、先端設備を使った技術を織り交ぜながら非常に精度の高い製品を作っているのが坂元醸造さんなのだ。

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そして、くろずと相性の良い中華をベースにした工場併設のレストランがめっぽう旨かった。程よく“くろず”が効いた、とろっとろの酸辣湯麺は絶妙。

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点心はシンプルに“くろず”だけをつけて食べる。醤油などはいらない。徹底的に“くろず”を堪能する。

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直売所では試飲もできる。 この坂元醸造さんの「くろず情報館“壺畑”」は地域の観光名所としてしっかり成り立っている。鹿児島観光の一ヶ所としてぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

坂元醸造株式会社 くろず情報館「壺畑」 鹿児島県霧島市福山町福山3075

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